脳情報発信所

過去に、gooブログに書いた記事を移植したものです

2020-01-01から1年間の記事一覧

一次視覚野のカラムとは

視覚〈1〉視覚系の構造と初期機能 (講座“感覚・知覚の科学”)発売日: 2007/09/01メディア: 単行本脳がつくる3D世界:立体視のなぞとしくみ (DOJIN選書)作者:藤田 一郎発売日: 2015/02/20メディア: 単行本一次視覚野に並んでいるカラム(小さな機能単位)は、それ…

アルツハイマー病とは

アルツハイマー病では、認知能力の低下は、エピソード記憶の異常から始まる。さらに進むと、言語能力が失われ、判断力が失われ、自分の居場所や家族の顔が分からなくなる。それに対して、運動失調は少ない。精神症状としては、性格の変化、うつ症状、異常な…

自然発生する手話言語

先天的に耳の聞こえない人たちの社会では、手話言語が自然発生する。それは音声言語の一対一的な翻訳版でも、もちろん単なる補助的なジェスチャーでもない。その手話言語は、音声言語と全く同じ普遍的な(組織的システムを持つ)仕組みから成り立っている。さ…

情報の分節化とは何か

人間が音楽を聴くとき、「分節化」の働きが重要である。 参考資料→「ヒトにおける記号列の分節化 」=from"PukiWiki"初めて聴く音楽ではメロディーの切れ目がわかりにくいが、何度も繰り返し聞くうちに、メリハリがつく。外国語を聞くときも同じである。脳に…

大脳皮質の大きなループ(円環)

大脳皮質の領野間結合は、「双方向」的である。例えば、視覚信号は、第一次視覚野から高次視覚野、さらに前頭前野と頭頂連合野へと伝えられるとともに、逆方向にも伝えられる。そのことによって、受容された情報が前頭前野へ伝わり、選択的注意を引き起こす…

結びつけ問題

脳のリズム作者:ジェルジ・ブザーキ発売日: 2019/04/17メディア: 単行本一次視覚野での視覚対象の断片的な情報が、意味のある全体情報に正しく統合される必要がある。 この統合化の問題を「結びつけ問題」という。 物体の場所(空間的な位置)、色、形状など異…

物体カテゴリーの認知と選択的注意

物体カテゴリー(その物体がどのカテゴリーに属するのか)の認知は、下側頭葉皮質までのボトムアップの(無意識的)処理で行われる。最上位にある前頭前野からのトップダウンの情報によって、入力情報を解釈するような能動的な過程は必要ではない。それに対して…

脳の画像

チンパンジーは自分の名前を判別

新版 脳波の旅への誘い 第2版 ‐楽しく学べるわかりやすい脳波入門‐作者:市川 忠彦発売日: 2006/04/24メディア: 単行本(ソフトカバー) 1)「チンパンジーは自分の名前を判別 滋賀県立大学などの研究で判明」=from"MSN産経ニュース" チンパンジーが人から名…

注意の転換に関わる脳部位

知的障害・発達障害児における実行機能に関する脳科学的研究 プランニング・注意の抑制機能・シフティング・ワーキングメモリ・展望記憶作者:橋本 創一発売日: 2020/03/11メディア: 単行本実験で注意を向けることを要求された手がかり刺激が提示されると、 1…

言語の起源はどこにあるのだろうか

チョムスキーと言語脳科学 (インターナショナル新書)作者:酒井 邦嘉発売日: 2019/04/05メディア: 新書霊長類(例えば、チンパンジー)は、「事物と記号との対応」はとてもよく学ぶが、記号を文法的に配列するのは不得意である。逆に、鳥は、さえずる歌にはある…

視野と第一次視覚野との関係

網膜での幾何学的位置関係は第一次視覚野で保存されている。つまり、細かく入れ目の入っているが、まだバラバラにされる前の絵柄が判別できる状態のジグソーパズルである。しかし、全くそのままというわけではない。 一つは、右視野は、左半球の第一次視覚野…

異種情報を統合する高次連合野

ネズミの脳は、ほとんどが一次皮質で占められ、連合皮質はほとんどない。 例えば、一次視覚野は、最も単純で最も初期に活動する視覚野である。 それぞれの一次感覚皮質は、近接する感覚皮質の高次連合野に投射する。 例えば、視覚連合皮質は、異なる経路で脳…

言語に関する「前適応説」

前適応説は、言語を一つの認知機構として取り扱わず、言語を構成する要素となる下位の認知機構がいくつも融合して出現した、融合機能だと考える。 それぞれの下位機能は漸進的に少しずつ自然淘汰で進化した。 それらが融合して言語を成したのは進化の歴史か…

2本足で移動するサル、ベローシファカ

親指はなぜ太いのか 直立二足歩行の起原に迫る (中公新書)作者:島泰三発売日: 2014/07/11メディア: Kindle版「第178回「原始のサル トゲの森を横っ跳び」:ダーウィンが来た!生きもの新伝説」 アフリカの南東、マダガスカル島。トゲだらけの奇妙な植物が立…

道具使用と頭頂葉との関係

道具使用に伴って、体性感覚皮質に近い「頭頂葉」では、体性感覚を視覚情報とすりあわせて、「道具が身体の一部」であるかのように表象される。例えば、サルが道具を使用すると、視覚受容野は、それまで「手だけ」だったものが、「手と道具の周囲を含む空間…

階層的な情報処理

脳は、断片的・要素的な情報から、複雑な総合的・統合的な全体像を形成してゆく。体性感覚野の内部では、1野から2野へと後方に移るに従って、ニューロンの受容野(例えば、指一本から手全体へと)は広くなり、反応特性が次第に複雑になってゆく。後方の頭頂間…

精密な手作業を実現するために

微妙精密な手作業を実現するためには、1)指先を顔の正面の最も視野に入りやすいところに置く。2)掌の向きや五本の指を最適な形にする。3)指先を目の前で自在に動かせるような体系を獲得する。4)精密な両眼視情報処理機構が準備される。5)高度な体性感覚運動…

「脳研究の最前線上・下」

1)「脳研究の最前線」(上巻) (ブルーバックス)2)「脳研究の最前線」(下巻) (ブルーバックス)by理化学研究所・脳科学総合研究センターfrom講談社ブルーバック脳研究、脳科学の最新の情報を分かりやすく紹介されています。とはいえ、専門的な内容や用語ももち…

第一次体性感覚野

手の位置や動きに関する情報は、皮膚や関節に無数に散在する受容器によって検知される。検知された情報は、感覚神経系を通って、脊髄や脳という中枢神経系に上ってゆき、大脳皮質の頭頂葉・第一次体性感覚野、特にブロードマン3野に到達する。

おばあさんは少女に変身する

一つの絵柄が二つの人物(おばあさんと少女)に見える視覚像で、意識的な知覚が切り替わるときには、感覚情報処理領域の内で、最も高次の処理をする部位の活動が切り替わりに伴って変化する。 参考資料→(私のブログ)「脳は競争原理で作られる」 参考資料→(私の…

ドーパミン神経細胞は批評家である

腹側被蓋野と黒質のドーパミン神経細胞は批評家である。ドーパミン神経細胞は「行動を起こすときに得られると期待される褒美・報酬の量」と「行動を起こした結果、実際に得られた褒美・報酬の量」の誤差に応じて興奮する。すなわち、期待値と実際値の開きが…

二種類の脳進化論

脳進化に関する二種類の理論がある。1)生き物はすべて自然の階梯上に並べられ、虫から天使や神へといたる系列をなすという「自然の階梯」的な脳進化論では、進化に従って新しい部分が付け加わることによって、脳は複雑化するという。脳は階層構造的に重層し…

記憶と海馬

海馬は、短期の記憶貯蔵庫そのものか、あるいは短期の記憶貯蔵庫にある記憶を長期の記憶貯蔵庫に移す極めて重要な役割をする。 記憶は、時間をかけて短期貯蔵庫から長期貯蔵庫へと移されるらしい。

脳と心の関係を解明する手がかり

脳と心の関係を解明する手がかり。 1)感覚情報の流れ。 2)脳の中の情報の流れを生み出した進化の過程。 3)神経細胞がつくる神経回路網。 4)脳に起こる疾患。

チンパンジーと人間の脳の比較

チンパンジーと人間の脳の比較 チンパンジー 人間 脳容積: 380 cm3 1100 ~ 1500 cm3 前頭前野の表面積: 6719 mm2 392.871 mm2 大脳新皮質に占める割合:16.9 % 29.0 %現代人の脳の平均的な大きさは1300立方センチあまり

行動は無意識の段階で始まる

いかなる種類の気づきも現れないうちに、すべての意識を伴う精神事象が、実際には無意識の段階で始まっている。 例えば、話したり、書いたりなどの思考、想像などなどの自発的行為においても、無意識段階で始まる。 話された内容が、話し手が意識的に言おう…

行動と意志と準備電位との関係

いつ行動すべきかあらかじめ予定していた場合には、約800~1000㍉秒前に準備電位が生み出される。 それに対して、予定していない場合には、約550㍉秒前に準備電位が生み出される。 このように、脳はまず最初に自発的な進行過程(準備電位)を起動する。次にそ…

睡眠中での感覚入力と運動出力の阻止

感覚入力は、「ノンレム睡眠」時には視床-皮質レベルで閉ざされる。それに対して、「レム睡眠」時には末梢レベルで閉ざされる。閉ざされる、阻止されるレベルが異なっている。であっても、感覚入力は、完全に遮断されることはない。次に、運動出力に関しては…

行動が起こる過程

自発的な運動の型を生成する「補足運動野」と、刺激に誘発された運動の型を生成する「運動前野」は、信号を運動野に送り、運動野は、脳幹や脊髄に指令を出す。信号の流れ=「補足運動野」/「運動前野」(「大脳基底核」が補佐する)⇒「運動野」⇒「脳幹や脊髄…