脳情報発信所

過去に、gooブログに書いた記事を移植したものです

物体カテゴリーの認知と選択的注意

物体カテゴリー(その物体がどのカテゴリーに属するのか)の認知は、下側頭葉皮質までのボトムアップの(無意識的)処理で行われる。

最上位にある前頭前野からのトップダウンの情報によって、入力情報を解釈するような能動的な過程は必要ではない。

それに対して、人間に固有の機能である、アルファベットの"T"と"L"の区別には選択的注意が必要である。

しかし、動物カテゴリーに属する物体(これは動物だとの認知)を検出するには、選択的注意を向けなくてもできる。

これは恐らく進化的発生順序から解釈できるだろう。つまり、アルファベットの"T"と"L"の区別は、人類にしか必要ではない。本能的能力として獲得されていない。だから、この機能は無意識的には処理されない。なので、意識的獲得が必要である。

なお、認知までの速さに関しては、あらかじめ注意の向いている場所に刺激情報が出たときには、その情報の処理が早まり反応時間が短縮する。

逆に、注意が別の場所に向いていたときには、刺激情報の処理が遅くなり反応時間がそれだけ延長する。

このように、選択的注意によって刺激検出の反応時間が短縮したり、刺激変化の検出の正答率が上昇するのは、
注意が特定の場所に選択的に向けられることによって、刺激反応の処理が早まり、正確に行われるからである。

つまり、大脳感覚野での感覚情報の処理過程は、(選択的)注意により「促進」されたり、また「抑制」されたりする。

参考資料→(私のブログ)「帯状回、特に帯状回前部と能動・注意・努力」
参考資料→(私のブログ)「注意の転換に関わる脳部位」
参考資料→(私のブログ)「二種類の注意」
参考資料→(私のブログ)「競合に勝ったものだけが生き残る」
参考資料→(私のブログ)「背外側前頭前野の障害がもたらすもの」

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