脳情報発信所

過去に、gooブログに書いた記事を移植したものです

2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

強制的な活動

運動皮質を電気刺激して生まれる筋肉の収縮や身体の動きを、被験者は、強制的な活動で、意図していない、自発的なものではない、と報告する。 では、意図や自発性を生み出す脳部位は、何処なのだろうか。

意識を伴う感覚経験

意識を伴う感覚経験を生み出すためには、適切な脳活動が最低でも約500㍉(0.5)秒必要である。 それよりも短い時間だと無意識的働きに留まる。 ある感覚信号へ注意を集中することが意識的なものになると考えられる。

視覚情報の二つの経路

視覚情報は、第一次視覚野で二つの視覚路1)2)に枝分かれし、前頭前野外側で再び収束する。視覚情報は、網膜から階層構造をのぼっていき、側頭葉と前頭葉の階層構造の頂点へとたどり着く。そこから情報は、運動に関連した領野へと下っていく。第一次視覚野か…

脳は事実通りには意識に情報提供しない

1)大脳皮質への直接の刺激と、2)皮膚への刺激を組みにして与える。どちらが先に現れたかを報告させると、皮質刺激の開始後に皮膚刺激を与えても、皮膚刺激が先だったと報告する。皮膚刺激が約500㍉秒遅延されたときに同時に現れたという。また、刺激を与える…

夢を見ている時の脳の活動

夢を見ている時の脳の活動パターンは、非常に特殊で、目が覚めている時の活動パターンとは全く違う。夢を見ているときには、第一次視覚野やそのすぐ隣の視覚部位の活動は、ノンレム睡眠と比べて抑えられている。夢を見ているときには、紡錘状回や側頭葉内側…

無意識に耳にした外科医の発言によって

麻酔のかけられている患者が無意識に耳にした外科医の発言の内容によって、後の回復に影響を与え得る。前向きな発言は回復を早めるが、否定的な発言は回復を妨げる可能性がある。

感覚経路の脳への伝達時間に違い

刺激を与える体の部位の距離の違いによって、感覚経路の脳への伝達時間に違いがある。 頭部での刺激は5~10㍉秒で到達し、足への刺激は、30~40㍉秒で到達する。 であっても、頭部での刺激と足への刺激とを同時に行うと、主観的には同時であると感じられる。

意識感覚が生じるためには

閾値レベルの微弱な感覚を引き出すには、反復的な刺激パルスを、約0.5秒間継続しなければならない。 連発した閾値刺激を0.5秒以下に短縮すると、感覚が消失する。連続刺激が継続し、0.5秒が経過した後で、微弱な感覚が始まる。 0.5秒以下であっても、パルス…

意識の喪失

意識を伴う経験を全くしていなくても、かなりの量の神経活動が起こっている。 脳幹または視床髄板内核にある活性化システムの中の小さな損傷が、意識の喪失、昏睡状態を引き起こす。 大脳半球の大きな破壊損傷によっても、意識が喪失しない。

物質的事象と精神的事象はカテゴリーが異なる

外部から観察できる物質的事象と、内部から観察できる精神的事象は、現象論的には異なるカテゴリーである。 身体からの感覚情報を受容する皮質分野を電気刺激した直後には、脳内では何も感覚を感じない。その代わり、身体の一部(例えば腕)に、実際には何も起…

意識を伴う経験を生じるために

覚醒して意識のある状態と、夢見の睡眠状態とは、脳幹と視床による大脳皮質の広範な活性化が必要である。これは意識を伴う経験を生じるために必要な背景条件である。

競合に勝ったものだけが生き残る

ある出来事に注意を払うと、ニューロン同士の競合に偏り(抑制)をかけて、注目した事柄を勝ちやすく有利にさせる。脳は視野に入ってくる曖昧な情報に対して、異なるいくつかの解釈を用意する。 それぞれの解釈を表すニューロン連合どうしが相互抑制し、一つの…

上丘の速い眼球運動と前頭前野による随意的眼球運動

上丘は、速い眼球運動のサッカード(視線を移すときに生じる急速な眼球運動)を起こすのに決定的に重要な役割を果たす。0.1秒もかからない速い眼球運動のサッカードは、標的が中心窩の中心に来るように、ねらいを定めて始まると、目的地にたどり着くまで止まら…

幻肢とはどのようなものなのだろうか

あたかもあるかのように感じる幻肢は、腕や脚を失った人ではかなり一般的に生じ、場合によっては数年続く。失った腕や脚の大きさ、長さ、重さ、位置、運動などを感じる。 意図的に動かしているという感覚さえ生じる。幻肢は、腕や脚を失ったのではなく、腕や…

伸縮自在な意識

意識(脳の働き)の本来の性質として、その一部に何らかの欠陥が生じたとき、その欠陥を補う形で再編成され、新たに完結した意識の統合体として機能し始める。意識はどこまでも、統一を保とうとする。逆から見れば、鉛筆を手に持ち紙に先端を走らせると、ざら…

マインド・タイム 脳と意識の時間

マインド・タイム 脳と意識の時間脳神経科学者であるベンジャミン・リベットの 「マインド・タイム 脳と意識の時間」 =脳だけが知る真実! ヒトは実は「遅れて」生きている! 自由意志、心脳問題、無意識と意識など人間をめぐる究極の謎が明かされる。40年に及…

閾下知覚でも行動に影響を及ぼす

意識にのぼらない閾下知覚の刺激でも、人の行動に影響を及ぼす。最初の光刺激を見せてから100分の7秒以下の時間間隔で、次の光刺激を見せると、最初の光刺激が見えなくなる。つまり、最初の光刺激は、意識にまで到達しない。であっても、潜在的に知覚された…

「主体感覚」、「所有感覚」は脳内で作られる

以前に「自己に障害を持つ統合失調症」について述べたが、活動の所有感覚を得るのに、運動の計画や意図は必要ない。活動の主体感覚は、活動計画が感覚のフィードバックと一致したときに得られる。活動の所有感覚(「これは自分の行為だ」)は、運動性の活動(運…

自意識が起きあがって見る明晰夢

「明晰夢」では、 1)夢で経験する知覚(記憶情報から構成される感覚情報)と、 2)起きているときの正常な注意力、自己認識、内省、意図、動機、記憶(一言で言えば、前頭前野の動き)が合体する。つまり、2)起きているときの正常な注意力、自己認識、内省、意図…

自己に障害を持つ統合失調症

「統合失調症」は、基本的には「主体感覚」と「所有感覚」の有無を表す自己の障害である。所有の感覚や主体の感覚が停止し、その結果、経験も変容する。これは自分自身の知覚であり、情動であり、思考であるという所有感覚が失われる。この行為は自分自身で…

早く成熟する扁桃体

扁桃体の中で、戦う反応、逃げる反応、固まる反応を担当する部分はそれぞれ異なっている。 刺激に対する敏感さも異なる。扁桃体は脳の中でも早く成熟する器官で、生まれた瞬間からもう機能している。心配性の母親から、胎盤を通じて大量のストレスホルモンを…

どの階層の情報が意識に入るのか

第一次視覚野と第二次視覚野のニューロン活動は、意識している内容ではなく、網膜に映されている内容のみによって決定される。つまり、意識内容ではなく網膜刺激を反映する。 第四次視覚野では、約40%のニューロンは、知覚に伴って発火頻度を変化させる。 下…

脳が判定にかかる時間

自然風景写真の中に動物が含まれていたかを反応するのに、0.5秒以下で行える。この反応は意識が行っているのではなく、無意識的な反応である。 脳内では150㍉秒程度で判定している。網膜から第一次視覚野に信号が到達するまでに、35㍉秒かかる。 ニューロン…

意識的学習から無意識的習慣へ

意識的に学習する初心者の段階では、後頭頂葉、前頭前野内側部の神経回路が、大脳基底核と小脳と連絡を取り合いながら、学習を起こして上達していく。 学習が完了すると、前頭前野は役割を終えて、代わりに、線条体や大脳基底核が、ある目的を達成するための…

記憶が形成固定される過程

休憩中やうとうとすると、アセチルコリンの濃度が薄くなり、海馬から皮質への経路が往来自由になる。 そうなると、海馬では記憶を符号化する役目の神経細胞が活発になる。海馬の記憶を符号化する神経細胞が活発になって、外界を監視する神経細胞をしのぐと、…

時間概念を作り出す機構

「時間の流れ」(時間が流れている)という概念を作り出す機構は、「ドーパミン」という神経伝達物質を主な燃料としている。空虚ではなく、可能性に溢れているが、時間が失われた(止まっている)感覚は、瞑想で超越の段階に達した人からも伝えられている。興奮…

頭頂葉と空間関係

頭頂葉は、視覚意識に重要な役割を果たすが、左右の頭頂葉を失っても、視野全体が無視されて視覚が完全に失われる事態にはならない。バリント症候群は、単一の物体を長時間執拗に見続ける。他のすべてが無視され、その物体しか見えない。他のものとの相対的…

注意の特徴や機能

注意は、一つの物体をコードするニューロン連合の活動を高めると同時に、もう一方の競合するニューロン連合の活動を抑制する。 注意は意識にとって必要ではない。 顕著度に基づいた注意の制御は常に行われているから、一瞬間の視覚意識を引き起こすような神…

意識と無意識の関係

車の運転中に、携帯電話で会話に熱中し、注意が会話に向いてしまうと、赤信号に気づく確率が下がり、赤信号への反応時間が増大する。 |

自分の肉体という知覚・認識が生まれるためには

脳卒中で身体の一部に麻痺が残るのは、脳の身体地図が損傷し、 1)現実の肉体と身体概念を結びつける信号の通りがなくなってしまったか、 2)身体概念そのものが一部消えてしまったからである。身体概念そのものの一部が消えると、 1)肉体のその部分の知覚がな…