「統合失調症」は、基本的には「主体感覚」と「所有感覚」の有無を表す自己の障害である。
所有の感覚や主体の感覚が停止し、その結果、経験も変容する。
これは自分自身の知覚であり、情動であり、思考であるという所有感覚が失われる。
この行為は自分自身で行っているという、自分が活動主体であるという認識ができなくなる。
このように、統合失調症は自己が消失してしまう場合もある。
が、逆に、自己がとてつもなく増幅する場合もある。
膨張した自己は、自分が神のような主体であり、見渡す限りすべてを制御していると信じ込む。
主体感覚が余りにも強烈な場合、すべてを自分が起こしたことだと思ってしまい、それにもっともらしい説明を作り上げる。
統合失調症者が、自由意志の感覚が失われる段階では、前頭葉の自己の構築に関わる領域が不活発になっている。
一般には、自分で自分をくすぐった場合には、くすぐったい感覚は感じられない。統合失調者では、自分でくすぐったときと、他人にくすぐられたときとでは、 触覚処理領域の反応に違いが全く見られない。
通常は、同じ強さの刺激を与えても、自分でくすぐるよりも、他人にくすぐられる方が、触覚処理領域は強く反応する。予測できる刺激に対して、脳は余り反応しない。
脳のなかの自己と他者: 身体性・社会性の認知脳科学と哲学 (越境する認知科学)
- 作者:総太郎, 嶋田
- 発売日: 2019/09/07
- メディア: 単行本